FM_wool

2015/01/01 
未(ミ・ひつじ)


 2015年が明けました。おめでとうございます。
昨年もまたヌースフィット製品をご愛顧いただき、まことにありがとうございました。
また、私が毎日出題している「きょうの毛髪科学」もおかげさまで1500回を超えました。
まだまだ皆様のご期待には遠く及ばないものの、今年は「ピッチャー返し」を合言葉に、少しでも皆様の声に的確に応えて参りたいと思います。

 さて今年は未年(ひつじどし)。私たち理美容産業が目指す「美」という文字の中に「羊(ひつじ)」の部首が含まれるのを不思議に思っていた方も多いのではないでしょうか。漢和辞典によれば、「美」という文字はひつじそのものを表しており、その形の美しさと肉のおいしさを表現しているとのことです。そういえば、おいしいという言葉も、「美味しい」と書きますよね。
  一方で干支の「未(ひつじ)」も、「味」とか「魅力」の文字の構成要素として「おいしい」という意味を持つと言われます。
  そして、羊の毛である羊毛は、多くはウール製品になりますが、本来なら廃材になるべき羊毛を加水分解することによってケラチンPPTになり、パーマやカラーなどのトリートメント成分として昔から利用されています。羊毛が、構造的にも成分的にも人毛に近いことから、まさに打ってつけのサステイナブルな原料なのです。このように、羊と理美容界は、漢字の上でも物質面でも、密接につながっているのです。

 というわけで、今年の年賀状のデザインは、羊毛のミクロフィブリルとマトリックスを使って、あるマークを3Dでつくりました。
わかりますか?そう、これは厳しい品質基準をクリアしたウール製品だけにつけられる有名なマークを立体的にしてみたものです。ヌースフィットもいつの日か、このマークのような信頼関係をお客様との間に築けたら。。
  さて、あのマークは、フランコ・グリニャーニ(サロリア)という人がデザインしたもので、デザインとしても非常に高い評価を得ているものですが、私はこれを紙テープで実際にできるのかどうか試してみました。結果は、できるんです!なんとも素晴らしいマークですね。そこで今度は、このデザインをPCのなかで再構築したわけです。ところどころミクロフィブリルの結合がはずれていますが、「ヌー坊」と呼ばれる坊やが一生懸命修復しています。

 しかし常々講習などでお話ししているように、現状ではトリートメントなどが損傷毛を治すことはほとんどできません。私は10分の1程度と申し上げるのですが、ほとんどの場合通常のトリートメントは、ある程度感触を良くするだけです。
  そんなことを言ったら、元も子もないじゃないか、トリートメントが売れなくなるじゃないか、と言われますが、そんなことはありません。トリートメントは毛髪の感触を良くしたり、ふけを抑えたりする、大切な価値を持っていて、お客様はそれをちゃんとわかっていて買ってくれるのです。
  では損傷は抑えることはできないのか?この問いに対しては、「かなりできるようになった」とお答えできるでしょう。その理由は、傷みの極めて少ないパーマ(カーリング料)とカラーができるようになったからです。
すなわち、損傷毛を治すことはできないものの、損傷を以前に比べ劇的に減らすことができるようになったのです。

 干支の「未」にはもう一つ大切な「いまだ・・・しない」うちに、という意味があります。3・11の教訓で、私たちは事故や災害を「未然」に防ぐ大切さを学びました。また、医療では医療費の高騰や患者の負担を抑えるため、病気になる前の不調の段階で治療する、すなわち「未病」を治すことの重要性が叫ばれています。
  理美容の分野でも、パーマ(カーリング料)ではスピエラや昨年のGMTなど酸性で効果を発揮する還元剤の登場によって、毛髪への負担の非常に少ないパーマがかけられるようになり、トリートメントに塩基性染料を配合したカラートリートメントは、トリートメントなのに色がつくということで、一般市場でもここ数年の最大のヒットとなっています。また、弊社のパワーR2+のような架橋剤も、ハイダメージ毛を健康毛に変えることはできませんが、カラーやパーマ施術の際、前処理や中間処理に使用することによって、毛髪ダメージを大幅に抑えることができます。このように、ここ数年の薬剤の進歩により、毛髪損傷はかなりの程度まで未然に防ぐことができるようになったのです。

 しかし大半の理美容師さんは、まだ従来の高アルカリのパーマ剤やカラー剤を使っていて、お客様の髪が傷んでも、ホームカラーや自宅でのケアが悪いとうそぶいています。しかしお客様は「サロンで傷んだ」ことを知っています。こうした認識のギャップが、お客様をサロンから遠ざけ、ホームカラー市場に向かわせるのだと思います。
  一方で、発売当初は「むずかしい、面倒くさい」と言われ、高アルカリに慣れてしまった技術者が匙を投げたスピエラやGMTなどの新規還元剤やFMCBなどのシステムでも、毛髪損傷に正面から取り組む誠実な技術者が新たな使用法を開発して、お客様に喜ばれています。またカラートリートメントも、サロンで行えば、自宅で行うより数倍長持ちし、美しく仕上がります。

Sp vs TG

 しかし問題は、そうした誠実な技術者が相応の対価を取れないことです。例えば膨潤度を損傷度と考えれば、図にあるように、スピエラのパーマは従来の高アルカリのチオグリコール酸のパーマの10分の1程度しか傷みません。しかし、スピエラのパーマ剤は、価格はチオパーマの倍します。ダメージを考えれば技術料は10倍以上違ったっていいはずなのに、それほど変わらないのが現状なのです。
  私は、こういった状況を打破し、誠実な技術者が相応の対価を得るためには、お客様にスタイルだけでなくパーマ剤についても関心を持ってもらうべきだと思うのです。お客様がレストランで「このお肉は国産ですか?外国産ですか?」と聞くように、「使用するパーマは酸性ですかアルカリ性ですか?」「スピエラはありますか?」と聞いてもらえるようにしたいのです。
  サロン側も、「今のパーマの薬剤は二種類あります、傷まなくてとても原価の高い薬剤と、従来の傷むけど原価の安い薬剤です。当店で使用するパーマはGMTと言って傷みが少なく原価の高い薬剤が中心です。値段は少し高くなります」と言って、お客様を啓蒙してほしいのです。

 スティーブン・コヴィーは著書『7つの習慣』で、ビジネスや人生で、ストレスから解放され高い成果を得るためには、ふつう「重要で、緊急なこと」に多くの時間を割かれるライフスタイルを改め、「重要で、緊急でないこと」に力を入れるべきだと説いています。すなわち図にある第二領域の活動を積極的に行うことで、ストレスや不安の原因である第一領域の活動で貴重な時間を割かなくてもよくなるのです。
  これは理美容で言えば、ハイダメージ毛の修復剤ばかり求める技術者は、実は自分がダメージを生み出していることに気づいていないため、ダメージを未然に防ぐ(すなわち高アルカリの薬剤を使わない)という根本的な解決を選択しようとしないのに似ています。

Time management

 これに対し、弊社の勉強会に参加し、弊社製品をいじくり回してくれるような技術者の方々、あえて仲間たちといいたいですが、彼らはこのマトリックスで言えば第二領域の活動に専念することによって、だんだんとハイダメージ毛を扱う必要をなくしてきています。「美しいデザインは、美しい髪にしかできない」という言葉は、クレアトゥール・ウチノの内野代表がヴィダル・サスーンその人から聞いた言葉だそうです。
  第二領域に専念する技術者と、薬剤に関心を持つお客様がもっと増えれば、サロンでも安いからと言って、今までのように傷む薬剤を選択することはできなくなり、結果としてダメージヘアは少なくなるでしょう。
  そんな日を夢見て、ヌースフィットは今年も仲間たちとともに第二領域の活動にまい進して参ります。

平成二十七年 元旦                カメガモリ@株式会社ヌースフィット

 

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